生きた英語から学ぶ② Caprio裁判官の愛にあふれる判決
Frank Caprio という方をご存知でしょうか。
この方のことは、本当に、大人にも学生にも知ってもらいたいと常々思っていたので、今回の動画はぜひぜひご覧ください。
※英語学習の視点でも勉強になるものを、元高校の英語教師目線で少しご紹介するシリーズです。特に中学生にとって難しいかなと思う部分には解説を付けています。解説が長く感じるかもしれませんが、セリフを載せている関係でどうしても行をとってしまっているため、実際にはそれほど長くはないと思います。解説に興味がなければ、もちろんその部分を読みとばしていただいてかまいません。思い思いの方法で楽しみながら、生の英語に触れる機会になったら嬉しいです。
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Caprioさんは、アメリカのロードアイランドという州にある、プロビデンス市の地方裁判所で裁判官を務めている方です。アメリカではこの方の判決のうち、事件性のあまり高くないものが長年テレビで放映されていました。
この方の言葉には心があります。瞳は常に慈愛に満ち溢れ、どのような人に対しても敬意が感じられます。人間味にあふれた彼の言葉1つ1つを聞くたび、いつも色々なことを考えさせられます。
今回ご紹介する動画は2つの裁判から構成されていますが、1つめの裁判の解説をしたいと思います。時間は2分間程です。
罪に問われているのはご高齢な方なので、ふたりともゆっくりめに、そして比較的はっきりとお話しされています。ぜひ、Caprio氏の表情も見ながら、まずは解説なしで聞き取ってみてください。
動画は、Caught In Providence いうテレビ番組の公式YouTubeで視聴可能です。
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ご覧になりましたか?
冒頭でCaprio氏が、問われている罪について説明をしています。
Mr. Cueva, you are charged with* a school zone* violation*.
※be charged with ~ :色々な意味がありますが、ここでは「~の罪で告発される」という意味で使われています。
※school zone : 登下校時間は減速が義務付けられている学校周辺の区域
※violation : 違反
Mr. Cuevaが聞き返したので、もう一度丁寧に説明する表現が下記です。
You are charged with a school zone violation, which* means that you were exceeding* the speed limit in a school zone.
※, which : a school zone violation を説明する関係代名詞です。
※exceed : 「を超える」
関・係・代・名・詞、とごっつい漢字5文字で言われると「難しいに違いない。嫌い。」と思ってしまいがちだと思いますが、関係代名詞は直前の表現を詳しく説明してくれているだけの、大変親切な役割です。以下のような感じです。
- You are charged with a school zone violation, which* means that you were exceeding* the speed limit in a school zone.
あなたは通学路における違反の罪に問われています。
- You are charged with a school zone violation, which* means that you were exceeding* the speed limit in a school zone.
あなたは通学路における違反の罪に問われていますが、その罪とはつまり (that 以下)という意味です。
- You are charged with a school zone violation, which* means that you were exceeding* the speed limit in a school zone.
あなたは通学路における違反の罪に問われていますが、その罪とはつまり、あなたの運転が制限速度を超えていた、という罪です。
- You are charged with a school zone violation, which* means that you were exceeding* the speed limit in a school zone.
あなたは通学路における違反の罪に問われていますが、それはつまり、あなたの運転が学校周辺地域における制限速度を超えていた、という罪です。
これに対し、Mr. Cuevaが下記のように答えます。
I don’t drive that fast, Judge. I’m 96 years old, and I drive slowly, and I only drive when I have to.
I was going to the blood work* for my boy*.
He’s handicapped*.
※blood work : 血液検査
※boy : = son。息子のことです。
※is handicapped : 「障害がある」
深刻な顔で聞き入っていたCaprio氏。次のように質問しました。
You were taking* your son to the doctor’s office*?
※take : 「持っtake(持って行く)」「連れtake(連れて行く)」と覚えると1回で頭に入りますよ。「持ってくる」、「連れてくる」は bring ですね。
※doctor’s office : 「医院」、「診療所」などと訳します。「病院に行く」と言う時は go to a hospital と言うと少しおおごとに聞こえてしまうので、see a doctor とか visit the doctor’s office と言うようにした方が良いようです。
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このあと、Mr. Cuevaの息子さんがガンを患っていることを知ったCaprio氏の下記の言葉にジーンときました。Mr. Cuevaも涙を浮かべて聞いていました。
You are a good man. You are a good man.
You really are what* America is all about.
「あなたはアメリカが大切にしていることを体現している人ですね。」
※what ~: 「~なもの/人」と訳す関係詞です。高校英語になるので少し難しいかもしれません。あまり難しいことは考えず、上記の訳で理解してみてください。
Here you are in your 90s*, and you’re still taking care of* your family.
※in one’s 90s : 「(年齢が)90代で(に)」。
※take care of ~ : 「~の面倒を見る」
It’s just a wonderful thing for you.
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このあとCaprio氏は、今法廷に来ている自分の息子を示し、この話を自身の息子も聞いてしまったので、Caprio氏が90歳になっても息子を車で送り迎えするよう要求してくるだろうとジョークを飛ばします。Mr. Cuevaの緊張や悲しみを少しでも解きほぐすために、柔らかい雰囲気を作り出したのではないかと思います。
そして最後にCaprio氏が出した判決。dismiss という単語が使われています。この単語の意味を知らなくても、どのような判決を下したか、前後の流れから読み取ってみてほしいと思います。
ここまでの解説を読み終わった上で、もう一度動画を見てみてください。最後にちらっと映るCaprio氏の笑顔。あたたかいですね。
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後日談がまた素敵。当時96歳だったCuevaさんとCaprio氏はその後友情で結ばれ、99歳になったCuevaさんが85歳のCaprio氏とお料理をしている様子が、2022年8月のYouTubeやCaprio氏のインスタにアップされています。
いつか皆さんに知っていただきたいと思っていたCaprio氏。今日ブログに書けてよかったです。読んでいただいてありがとうございました。
ライター:EFL受付Atsuko
道内の高校で英語教員として15年間勤務。時代は学校の英語の授業にオールイングリッシュの授業を求め、カリキュラムや教科書が変わり始めたころ。一方で現場にいるのは、ひたすら訳読を勉強し会話の授業を受けた経験などない世代の教員たち+思春期・反抗期真っただ中の生徒たち。この状態でオールイングリッシュの授業の成立など夢物語、できたところで日本人の英会話力はあがらない、と悶々とした日々を送った愛犬家。現在は、文法が苦手な中学生高校生のお手伝いをたまにちょっとしつつ、日本人の英会話力になにが必要か、日々勉強し発信しています。