ワッジ
スクールの朝は、レッスンの前に乳児コースのお子さん達が先生達とおもちゃで遊ぶ、かわいらしいひとときから始まります👶
その日もいつも通りの朝でした。
先生達はもちろん英語で話しかけながら遊ぶのですが、朝イチの赤ちゃん達はいまいちエンジンがかかりきらない様子。あまり声を出さず、先生をじっと見つめたり、にっこり笑顔で返すだけだったり、はずかしがってお母さんの陰に隠れたり。あまり刺激を与えないように、私も少し距離を置いて見守っていました。
ここまではいつもの光景です。
そのとき聞こえてきたのが、「ワッジ?」「ワッジ?」「ワッジ?」と連発する男の子の声。赤ちゃん言葉のようにも聞こえますが、日本語としては聞き慣れない単語です。あれ、これってもしかして…と気付いて顔を上げると…。
絵がたくさん描かれたボードを抱えたある男の子が、ひとりの先生に向かって絵を次々に指差しながら、「ワッジ?」「ワッジ?」「ワッジ?」と問いかけていたのです。先生は指で差された絵を英単語で答えていました。ふたりのやりとりはかなりスピーディーでしたが、彼はちゃんと、先生が英単語を答えてから次の「ワッジ」を発していました。
それはまるで、 先生(男の子)が生徒(先生)に問題を出しているレッスンの光景さながら!先生役の男の子はソファの上、生徒役の先生は床に正座でした(笑)。
絵を指差して、“What’s this?”と問いかけていたんですね。なるほど、「ワッジ」。納得です!
彼は、レッスン中に聞いたことのある「ワッジ」という表現をただ真似して発していたのではありません。その英語表現が使われるべきシチュエーションをきちんと理解して、言葉として正しく”使って”いたのです👏
この言葉はこういうときに使うんだよと教えられなくても、言葉を場面と結びつけて覚える。そして違和感なく使えるようになる。
母国語を覚えるのと同じ流れで英語を習得している証を、小さな男の子に教えてもらった朝でした。
ライター:EFL受付Atsuko
道内の高校で英語教員として15年間勤務。時代は学校の英語の授業にオールイングリッシュの授業を求め、カリキュラムや教科書が変わり始めたころ。一方で現場にいるのは、ひたすら訳読を勉強し会話の授業を受けた経験などない世代の教員たち+思春期・反抗期真っただ中の生徒たち。この状態でオールイングリッシュの授業の成立など夢物語、できたところで日本人の英会話力はあがらない、と悶々とした日々を送った愛犬家。現在は、文法が苦手な中学生高校生のお手伝いをたまにちょっとしつつ、日本人の英会話力になにが必要か、日々勉強し発信しています。