奥行きの奥深さ
突然ですが… จ๊ะเอ๋
…読める方いらっしゃいますか?これ、タイ語で「ジャッエー」と読みます。
「えへ、来ちゃった!」という意味だそうです。これ、赤ちゃんに対しても使うのですが、どのような意味で使う言葉だと思いますか?
他の言語でもご紹介してみます。
cache-cache cou-cou…これはフランス語で、「カシュカシュ・クークー」と読みます。
クークーとはカッコウの鳴き声だそうですよ。日本ではハトに置き換えられてしまいましたが、ハト時計は本当はハトではなくカッコウだそうです。
隠れているハトが時間になれば突然飛び出してきてちょっとびっくりする、あのハト時計…連想してみてください。赤ちゃんに対して使う、この「カシュカシュ・クークー」という言葉、意味はなんでしょうか??
もう一つ、英語での表現を紹介すれば聞いた事がある方もいらっしゃるかもしれませんね。
英語では、peek-a-boo…「ピーカブー」と言います。
peekは「ちらっと見る」という動詞。booはブーイングの「ブー」でもありますが、人を驚かすときの「ワッ」にもなります。
ちらちら見ながらワッと驚かす。もうおわかりですか?
そうです!「いないいないばぁ」のことです!小さいときみんなやりましたね〜!
いないいないばぁはそれぞれのお国の言葉で外国にもあるって知っていましたか?
国を問わず、赤ちゃんがいないいないばぁが大好きなのにはちゃんと理由があるんです。
その理由とは…
まず第一段階として、見えていたはずのお母さんの顔が「いないいな~い」で目の前から突然消えて、「ばぁ」で突然現れるので、赤ちゃんはびっくりして反応するんですね。赤ちゃんは空間に奥行きがあることをまだ認識できていないので、手の後ろにお母さんの顔があるということがわかっていないため、驚くのです。
第二段階として、赤ちゃんはこの繰り返しの中で、「いないいな~い」で消えたものが、「ばぁ」でまた現れることを覚えていきます。そして、「いないいな~い…ばぁ!」で自分の予想通りのこと(消えたお母さんの顔がまた現れる)が起こるので、嬉しくなってキャッキャと笑うのです。
自分が見えているものだけが世の中に存在していると思っていた赤ちゃんたちは、自分の視界からお母さんの姿が見えなくなると大泣きですね。「お母さんが消えてしまった!もう2度と会えないんだ!!」と思うのでしょうか。でもこうやって空間に奥行きがあることを知っていくと、「ここにいたはず」「そこにあったはず」いう考えを持てるようになり、トイレに行ったママを探しに行ったり、物かげに隠れたおもちゃを探そうとしたり、ということができるようになっていきます。
このように、いないいないばぁで子どもが笑うのはただの遊びなのではなく、ちゃんとした成長の過程なのですね。だから、家族が赤ちゃんにいないいないばぁをして赤ちゃんがそれを喜ぶのは、国を問わず当然!ということになります。
当スクールの乳児コースのレッスンでも、先生と一緒に『peek-a-boo~♪』と歌いますよ。
peek-a-booの絵本を読み聞かせることもあるのですが、歌も本も子どもたちはやはり真剣に見入ったり喜んで笑ったりします。
peek-a…
boo!!!
まさか空間の奥行きをいないいないばぁで学んでいたとは!
大人は遊びと思っていても、赤ちゃんはあのちっちゃい頭で一生懸命おぼえているんですね。そう思うと、赤ちゃんたちがなんだかいっそう愛おしくなってしまいます!
ライター:EFL受付Atsuko
道内の高校で英語教員として15年間勤務。時代は学校の英語の授業にオールイングリッシュの授業を求め、カリキュラムや教科書が変わり始めたころ。一方で現場にいるのは、ひたすら訳読を勉強し会話の授業を受けた経験などない世代の教員たち+思春期・反抗期真っただ中の生徒たち。この状態でオールイングリッシュの授業の成立など夢物語、できたところで日本人の英会話力はあがらない、と悶々とした日々を送った愛犬家。現在は、文法が苦手な中学生高校生のお手伝いをたまにちょっとしつつ、日本人の英会話力になにが必要か、日々勉強し発信しています。